大澤めぐみ先生の『Y田A子に世界は難しい』の感想を、ネタバレを気にせずたっぷり書いていきたいと思います!!
感想!
否定をしない優しい世界
『Y田A子に世界は難しい』の何が良いって、何一つ否定をしないところ。
全肯定…ともちょっと違うのですが、瑛子ちゃんがなんでもかんでも頭ごなしに否定しないのがすごく良い。
そういうのもアリだよね、っていう適当さ、器の大きさが読んでいて心地よいです。
特に風香ちゃんの変化について、自分は今の風香が良いと思うけど、友だちがいなかった頃の彼女も悪かったわけじゃない…と多様性を認めているのが素敵。
ぼっちは悪!下等!と言い切るのは簡単だけど、そういう価値観押し付けってもう流行らないですよね。
この時代感覚がすごく好き。
なんか良い話
そんな風に瑛子ちゃんがなんでも受け入れるタイプだから、ともすれば作品として何を伝えたいのか迷子になりそうだけど、そうはならないんですよね。
うまく言えないのですが、全編通して良いこと言ってる感がすごい。
ものすごい真っ当感というか…。
読んでいて「私も頑張らないと!!」と肩に力が入る感じではなくて…
こんな風に生きるのっていいよなーうんうん分かるなーっていう、北風と太陽で言うと圧倒的太陽みたいな。
押し付けがましくないけど、ちゃんと言いたいことが分かる感じがとても良いです。
ロボットだからこそ当たり前のことも一つひとつ考える
主人公の瑛子ちゃんがロボットなので、とにかく一つひとつの物事を真剣に考えていく。
そこがすごくぐっときました。
一番胸を打たれたのは、自分が長持ちすることだけを考えるなら、押し入れにこもっている方が良い。でも、そうはしない…というところ。
何かを犠牲にして何かを得るということですね。
なるほど、人間って無意識にそういう取捨選択をして、より良く生きるために学校に行ったり働いたりしているのか、と…当たり前のことですがすごく考えさせられました。
そして、ロボットだからいちいち全部考えないといけない瑛子ちゃんを見ていて、は~人間ってすごく当たり前にとんでもなく高度なことを要求されているんだな~~と。
なんかこう…生きてるだけで偉い…!な気持ちになりました(笑)
人間だって空気読めなかったり、混乱してピーガガガってなっても良いと思う…!
忖度のないストレートな言葉が良い
ロボットの瑛子ちゃんはもちろん忖度なんて知りません。
全部が本音。
そして人間とはちょっとズレているからこそ、特に説教くさくもなく、なんだか言葉がすっと入ってくるんです。好き。
独特の中毒性の高い文章が好き
本当に最初から癖がすごいですよね(笑)
一文がスーパーロングなので、息継ぎのタイミングを見失います。
これでも大澤めぐみ先生の作品の中では癖のない方ですが…。
「長文は悪文である!!」的な文章術アドバイザー(?)とかなら確実に悪文判定しそうな、とにかく言いたいこと全部詰め込んじゃうみたいな文章。
しかし不思議と読みやすい。
なぜか頭にするする入る。
これは本当にプロのなせる業ですよ。すごい。
ただ中毒性がすごいので注意ですね(笑)
一般人が大澤文法に半端に影響受けるとやばいです…
ロボットに未来があるなんて素敵すぎる
なんといってもラストが素敵ですよね。
ずっとボケ倒しでクスクス笑わせてくれてたのに、ここに来て泣かせに来るとは。
瑛子ちゃんとより長く一緒にいたいと思う風香ちゃんも、ロボットだけど未来は広がっているんだなと思える瑛子ちゃんもすごく素敵!
いやー良いもの読みました!
おわりに
最後まで読んでくださって、ありがとうございます!
今回2周目でしたが、やっぱりすごく面白かったです!また読もう。