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【解説】『君と時計と嘘の塔』時震とタイムリープ現象を一から解説&考察します

時震とタイムリープを解説!『君と時計と噓の塔』 ライト文芸
ライト文芸
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綾崎隼先生の『君と時計と噓の塔』の肝となる時震とタイムリープ現象。
最後まで読んだけどこんがらがってしまった…という方向けに、時系列順に整理して解説します!

えしゃ
えしゃ

ネタバレになるので未読の方は読まないでくださいね~!

ループ中の出来事を整理したい方は、先にこちらの記事をご覧ください!
とにかく細かく解説しています!

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時系列順に整理!

さっそく見ていきます!

8年前:佐渡島で時震

このときに、世界がふたつに分岐し、パラレルワールドとなります。

5年前の8月8日:八津代祭

雛美が緒美として生きていた世界をA、飛ばされた世界をBとして、八津代祭の日の3人の足取りを時系列順にまとめると…

(A)雛美が八津代祭へ向かい、珍しい懐中時計を持った綜士が気になり追いかける

(B)芹愛が亜樹奈とともに、白鷹高校の職員玄関から校内へ。屋上で花火を見る。

(A・B共通)花火を写真におさめるため、綜士が開いていた職員玄関から校内へ。4階から花火を見る。

(A)綜士を追いかけて雛美も校内へ

(A)雛美が時計塔から転落

雛美がパラレルワールド・世界Bへ転移

(B)時震が発生

(B)綜士が校内から逃げ、電車に乗る

(B)雛美も綜士を追いかけて電車へ

(B)綜士が自宅最寄り駅で時刻を確認、9時を回っていることに驚く

(B)雛美が電車賃を精算している間に綜士を見失い、迷子に。そして緒美の父に保護される。

(B)校内の状況を確認したのち、亜樹奈が芹愛を家の近くまで送る

(B)芹愛と綜士が自宅前で出会う

(B)芹愛が家の時計と、自分の電波時計のズレに気付く

一連の出来事を経て、時震の瞬間に雛美の近くにいた、芹愛・綜士・亜樹奈が結びつけられたと考えられます。
4人の中に、パラレルワールド・世界Aからやってきた雛美がこれまで生きてきた約12年分の余剰時間が留まることで、5年後のタイムリープの原因となります

また、このとき雛美の余剰時間を世界が抱えた結果、時震が起き、白鷹高校に近い地点ほどその影響を強く受け、白鷹高校を中心に同心円状に時計が狂います。
そして、千歳先輩が白鷹高校に興味を持つこととなるのです。

間の期間のできごと

以降、タイムリープが始まるまでに3人に起きた出来事を列記します。
この期間の出来事は、ストーリーとしては重要であるものの、タイムリープには直接関係しません。

  • (雛美:小6)雛美の身元が分からず、鈴鹿家の子どもになる
  • (綜士:小6)その後の綜士と芹愛の人生を狂わせる、泥棒事件を起こしてしまう
  • (芹愛:小6)父の再婚により、亜樹奈さんが杏奈と芹愛の継母になる
  • (雛美:中1)雛美が綜士の中学の体育祭で綜士を見つける。
  • (雛美:中1)雛美が綜士の家を探しに行き、杏奈に家を教えてもらう
  • (芹愛:中2)父が癌になり、そのときは治るが再発の可能性を知らされる
  • (雛美:中2)改めて懐中時計を返しに綜士の家を訪れるが、綜士には会えず
  • (芹愛:中3)スポーツ推薦で白鷹高校への進学を決める
  • (綜士:中3)芹愛と同じ高校へ行くため、猛勉強を始める
  • (雛美:中3)綜士の母から綜士の志望校を聞き、猛勉強を始める
  • (芹愛:中3)高3の杏奈は通信制高校を3年で卒業せず、半年延長することに
  • (芹愛・綜士・雛美:高1)白鷹高校に入学

高1の八津代祭

そして、杏奈が繰り返し死ぬ原因となる、1年前の八津代祭の日。
この日の杏奈・雛美・綜士の足取りを整理します!

卒業を控えた杏奈が、何もできない自分に思いつめ、橋へ

綜士に懐中時計を返すため、雛美が綜士の家へ向かう

雛美が橋の上の杏奈のただならぬ様子に気付く

杏奈を助けてもらうため、雛美は通りがかった綜士にアイスコーヒーがかかるよう仕組む

服が汚れた綜士は、居合わせた杏奈に染み抜きをしてもらう

綜士に感謝されたことで、杏奈の心が満たされ、自殺を思いとどまる

本当はこの日、1年前の八津代祭の日に死ぬはずだった杏奈が、この世界に雛美がいたおかげで死ぬのを回避します。

しかし、この日から世界は、死ぬはずだった杏奈の時間を余計に抱えることになります。
おそらくそれが一年後の10月10日午後10時に限界を迎え、杏奈が死に至るのです。

この日杏奈が死ぬのを直接防いだのは綜士なので、1年後に杏奈が死ぬ原因を作るのも綜士。
そういう因果関係が結ばれていたのでしょう。
芹愛が何度阻止しようとしても、必ず綜士が杏奈の死に関わってしまいます。

杏奈の死とタイムリープは独立したできごと

ややこしいですが、杏奈の死とタイムリープは別々の出来事だと考えます。

綜士が生かした杏奈が、綜士が原因で死ぬ。
本来は、ただそれだけの出来事だったのだと思います。
しかし、杏奈を大切に想う芹愛が、余剰時間を抱えていたために、杏奈の死をきっかけにタイムリープが起きてしまいます。

また、ただ芹愛が大切な人の死に絶望しただけなら、その死を回避することでループが終わっていたはず。
しかし、タイムリープの原因となる杏奈は、ただの事故で亡くなるわけではありません。
伸びた寿命分の時間が飽和することが杏奈の死の原因なので、どうやっても回避することができません。

別々の原因で起きる「杏奈の死」と「タイムリープ」が芹愛によって繋がり、芹愛は地獄のループの中に閉じ込められてしまうのです。

ループ前後のできごと

9月末、芹愛の父が亡くなることで、妻の亜樹奈さんと娘の芹愛は悲しみに暮れます。
しかし、亜樹奈さんにはお腹の子ども、芹愛には杏奈という「希望」「心の支え」があったことで、2人はタイムリープには至りません。

しかし、10月の白陵祭初日に杏奈が亡くなることで、とうとう芹愛が絶望し、タイムリープが始まります。
芹愛がタイムリープを回避しても、同じく余剰時間を抱える雛美・綜士が絶望に至ると、やはりタイムリープが起きます。

周回タイムリープしてきた人消えた人芹愛の認識雛美の認識綜士の認識亡くなる人余剰時間の残り
1周目1周目1周目1周目杏奈(脱衣所で死)約11年10ヶ月3週間
2周目芹愛クラスメイト・京香2周目1周目1周目杏奈(ヒーターで感電死)約10年10ヶ月3週間
3周目芹愛クラスメイト・小春3周目1周目1周目杏奈(チーズでアレルギー死)約9年10ヶ月3週間
4周目芹愛クラスメイト・八重4周目1周目1周目杏奈(階段から転落死)約8年10ヶ月3週間
5周目芹愛陸上部後輩・美月5周目1周目1周目杏奈
(死因は本文中に記載なし)
※うち一回は、芹愛が捨てたヒーターを探しているときに死亡
約7年10ヶ月3週間
6周目芹愛陸上部顧問6周目1周目1周目約6年10ヶ月3週間
7周目芹愛陸上部友人・貴子7周目1周目1周目約5年10ヶ月3週間
8周目芹愛陸上部友人・聡美8周目1周目1周目約4年10ヶ月3週間
9周目
(通称1周目)
芹愛陸上部先輩・希9周目1周目1周目綜士(学校で夜に死亡)約3年10ヶ月3週間
10周目
(通称2周目)
雛美雛美の父9周目2周目1周目綜士(学校で転落死)約3年4ヶ月3週間
11周目
(通称3周目)
雛美雛美の母9周目3周目1周目綜士(時計塔から転落死)約2年10ヶ月3週間
12周目
(通称4周目)
雛美雛美の弟9周目4周目1周目芹愛(駅で夕方に死亡)約2年4ヶ月3週間
13周目
(通称5周目)
綜士クラスメイト・一騎9周目4周目2周目芹愛(駅で自殺)約2年3ヶ月3週間
14周目
(通称6周目)
綜士綜士の母9周目4周目3周目杏奈(死因は記載なし)約2年2ヶ月3週間
15周目
(通称7周目)
芹愛芹愛の継母・亜樹奈(と、お腹の子)10周目4周目3周目綜士(時計塔から転落死)約1年2ヶ月3週間
16周目雛美雛美の祖母10周目5周目3周目芹愛(病院屋上から飛び降り)約8ヶ月3週間
17周目綜士千歳先輩10周目5周目4周目綜士(駅で飛び込み)約7ヶ月3週間
18周目雛美雛美の隣人10周目6周目4周目芹愛(駅で飛び込み)約1ヶ月3週間
19周目綜士雛美1周目5周目約3週間

タイムリープするたび、雛美が転移してきたときの約12年分の余剰時間を消費するとともに、タイムリーパーの大切な人を一人消して、余剰時間の帳尻を合わせていきます。

芹愛とともに5年前の時震を経験している亜樹奈さんも余剰時間と結びつけられていたはずですが、お腹の子どものおかげで最後までタイムリープには至りません。

ループ中の出来事は、こちらの記事で詳しく解説していますので、割愛します。

タイムリープの終結

最終的に、18周目で綜士のタイムリープに雛美を巻き込むことにより、この現象にケリをつけることに。

雛美の消失により、雛美が持ち込んだ余剰時間により発生していたループが全てキャンセルされ、雛美の存在を除き、1周目の世界が復元されます。
芹愛がタイムリープしていた一年前の10月13日から、世界が復元していると考えて良いでしょう。
もちろん、3人のタイムリープによって消えた人々は全て無事に戻っています。

最後の19周目では、雛美の存在と、それに伴い発生した時震は消えています。
しかし、例えば、時震がなくなっても千歳先輩は(その理由は忘れて)白鷹高校で留年を繰り返しているなど、基本的には1周目の状況がそのまま復元しています。

これに伴い、一年前の8月8日に死ぬはずだった杏奈は、世界が復元する「一年前の10月13日」には生きていたので、助かったという事実自体がなくなることはなく、無事でいます。

また、最後のタイムリーパーでなかった芹愛の記憶も、1周目の時点に戻り、芹愛は一連の悲劇を何も覚えていません。
芹愛のことが何より大切な綜士にとって、最愛の姉の死や、雛美を消してしまったこと、そういった辛い記憶を芹愛の中から消せたのは僥倖だったのではないかと思いますが…

ただし、先に言及しましたが、タイムリープと杏奈の死はそれぞれ別の原因で起きる出来事です。

だから、10月10日午後10時に、杏奈の伸びた寿命が飽和することは変わらなかったのでしょう。
綜士の警告を受け、八津代町外にいた杏奈は事故に遭いかけますが、居合わせた芹愛が助けます。
これにより、杏奈の死を無事回避して、物語が幕となります。

八津代町外では杏奈の死を回避できる?

八津代町外に杏奈を連れ出した16周目・19周目ともに、杏奈は夜に危険な目には遭っています。
しかし、発生時間は八津代町内にいたときの午後10時から多少ズレていますし、19周目では死を回避することもできました。

杏奈の寿命が延びたのは、雛美の存在により起きたことですが、時震が直接関係しているわけではありません。
16周目・19周目の危険は単なる偶然だった、という解釈もできるかなと思います。

おわりに

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
『君と時計と嘘の塔』は何周しても新しい発見があってやめられません…!
この記事が再読の参考になったら嬉しいです!

えしゃ
えしゃ

感想と細かい考察はこちらの記事で!

プロフィール
えしゃ

えしゃ(@shallot0147)と申します!
・ラブコメ好き。少女漫画とラノベが大好きです!
・雑食&乱読
・好きなジャンル:ラブコメ、広義のミステリー、ローファンタジー、食べ物が美味しそうな話
・愛読書:辻村深月『名前探しの放課後』

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