『君と時計と嘘の塔』を読むと毎回何かしら書き散らしたくなるのですが、今回はあの2人の関係が気になったのでつらつら書いていきます。
綜士はクズ、だけど良い子。芹愛は不器用、だけど良い子。
2人に幸せになってほしかった、という感じのことをふわっと思っているオタクの感想です。
考察というより感想なので、あまり有益なことは書いてません…
自分で言うのもなんですが有益なほうの記事はこちら
芹愛と綜士について考える
間が悪かった2人
この2人についてまずこれだけは!言いたいんですけど、これ出会ったのが早すぎましたね…。
ふつうに高校生大学生くらいでお互いフリーで出会ってれば、特に何事もなく付き合えていたはず。
お互い強烈に想っているのに間が悪くて結ばれないっていう。つらい。
小学生のときのあの事件について、まあ綜士が悪い、120%綜士が悪いのは前提としてですが、いろいろ間も悪かったなぁと。
あと少し何かが違えば、違う結末になっていたはずなんですよ。
例えば、もし芹愛がもう少しだけ愛想良かったら…。
そもそも綜士は人の心が分からないタイプ。
芹愛が不愛想気味なので、綜士は好かれていることに気付かず、だから態度が悪い。
(逆に愛想の良い杏奈さんにはある程度懐いている)
もし芹愛が「綜士に見てほしくて頑張ったよ!」と屈託なく言える子だったり、「やっぱり綜士はすごいなぁ!」とよいしょできる子だったら、綜士もあそこまで芹愛を敵視することもなかったはず。
そうすればあんな事件が起きることもなかったんだ…。
八津代祭帰りに遭遇したときの態度とか、綜士もあれなんだが芹愛は好意あるんだからもっとこう…こうさぁ…。
もしくは、もし綜士がもう少し馬鹿だったなら。
あんな卑劣なことをせず、「お前目障りなんだよ!」と面と向かって言える程度にアホで、プライドがなかったら。
もちろん言われた芹愛は傷ついたでしょうが、芹愛の経歴には傷をつけることはなく、2人の関係もここまでこじれることはなかった…と思う。
そして、あのときアホの山中を巻き込んでいなかったら。
確実に紛失に気付いて泣き寝入りしないやつ、ということで選んだんでしょうが、声の大きいアホを巻き込んだのは悪手…。
山中が綜士を追い込まなければ、芹愛が嘘の自白をすることもなく、疑惑は残りつつも、芹愛が泥棒と確定されることはなかった。
こんな大事になったのは本当に2人にとって不幸だった…。
綜士が悪いんですよ、全部綜士が悪い。そこは擁護できない。
でも間とか運も悪かったなという気持ちが強くて。
というのも、この一件(と母親へのきっつい反抗期)を除けば綜士良い子なんだよな…。
昔安奈さんを庇った件もだし、雛美に対する対応とかも雛美の態度の割に最初から優しいように思う。
そういう綜士が小学生のときあそこまで追い詰められたのって、やっぱり芹愛も感じているように父親の件があって精神的に不安定で、自分の地位を脅かされるのに心底恐怖したからで、
それはちゃんと周りの大人がケアしないといけなかったんだよな…とか。
綜士に心の余裕があれば、たかが一競技で負けたくらいであんなことしなかったはず。
本当にあとちょっと何かが違えば、別の未来があったはずなんだよな…。
高校生現在の芹愛の気持ち
ただまあ、綜士側の事情はともかく、されたことはされたこと。
芹愛はどう思ったのかなっていうと。
芹愛側の回想や、綜士が謝罪をしたときの反応を見ると、やっぱり綜士の思っていたような、単純に嫌っている・恨んでいる…とはだいぶ違う、複雑な感情だったんだと思います。
ループが始まる前の芹愛は「お姉ちゃんを助けてもらったこと」と「綜士を庇うこと」とを相殺して、これで終わりにしようとしたわけだから、
綜士に憧れるのをやめて、とにかく彼のことを考えないように、そして自分を嫌っている綜士の視界に入らないように生きてきたんだろうなと。
で、ループ中はどうだったかというと、強制的に綜士のことを考えざるを得なくなっているわけで、状況としてはあの事件前と似たような感じになっていると思うんですよね。
綜士からは好かれていないけど、自分は気になってるっていう。
「好かれてない」の度合いも小学生のときとは全然違うし、「気になってる」も憧れや好意からくるものではないわけですが…。
改めて綜士を目で追うようになって、やはり嫌いになれないというのが正直なところだったんじゃないでしょうか。
姉の死の原因となる人間で、過去に酷いことをされた相手で、しかも芹愛はこの時点で10回もループしていてすでにまともな精神状態ではないだろうに、それでも16周目で綜士のことを非情に殺すことができなかったり。
9周目や14周目で少し話しただけで絆されそうになったり、14周目で雛美と初遭遇したときにイラっとしてたり、完全に意識してちゃってるよなぁ…。
17周目の芹愛
そう考えると、17周目の芹愛が綜士に優しいのも分かる。
17周目というと、千歳先輩が消えて初めてタイムリーパー3人だけで共闘する周回です。
あのときの芹愛は、雛美と向き合うように、雛美のそばにいるようにと、綜士に諭してきました。
あれって綜士への恩返しですよね…。
今まで酷い態度をとってきて、芹愛の認識では彼を殺したことすらあるのに、それでも自分を見捨てず助けてくれていた綜士に、
雛美を消す周回の記憶を残すことになる彼がこの先後悔しないように、最後にちゃんと雛美と向き合えるようにしていたんですよね。
愛…尊い…。
芹愛は綜士の想いをどうとらえているか
でも、芹愛が綜士を大切に想うようになったから、じゃあ2人がうまくいくかっていうと、とてもそうは思えなくて…。
綜士側に問題があると思うんですけど。
一騎の指摘の通り、綜士は芹愛とどうこうなる気が一切ないわけです。
それって芹愛にも伝わるよな。
時計塔から飛び降りる16周目、ホテル火災で失敗した17周目、最後のやり直しに賭けた18周目冒頭で綜士は芹愛に想いを告げていますが、一番2人の関係が改善していた17周目の告白がポイントかなと思っています。
綜士をタイムリープさせることを決め、何もかも忘れると分かっている芹愛の反応が切ない。
「せっかく告白されたのに忘れるのはもったいない」ですからね…。
なんかもうほとんど言っちゃってる感じですが、綜士がアホなので、
「せっかく(綜士に)告白されたのに」
ではなく、
「せっかく(男子に)告白されたのに」
程度に解釈してスルーしてるっていう。アホなの??
そして、このとき「私を好きになるって仕方ないことなんだね」と芹愛が言っているのがすべてな気がする。
綜士の想いは5年前の後悔に起因するもので、芹愛に許されたいと願うあまり、それを恋だと思ってしまったのだと。
純粋に自分を好いているわけではないのだと、芹愛は思ったんでしょうね。
17周目の彼ら
そう考えると、17周目、これすごくどうしようもない三角関係が発生してないか…?
この周回だけは冒頭から芹愛は綜士の気持ちを知っています。
綜士の今の気持ちを知って、嫌われていないと分かって芹愛は安心したと思うし、今までずっと助けてくれていたことを理解して、心から感謝したと思う。
愛想がないけどそのぶん根は素直な子なので。
この周回の芹愛は、素直に綜士のことを大切に、あるいは特別に思うようになっているんじゃないかと思いますが、綜士の方にその気が一切ない。
芹愛に好かれることは絶対にないからと、逆に自分だけ安全圏で安心しきっていて、本当この男…ってなりますね…。
そして、雛美の存在ですよ…。
綜士は自分には気を遣って優しくしてくれるけど、一方でいつもいっしょにいる雛美とは気の置けない関係になっている。
それを芹愛はどういう気持ちで見ていたんだろうな。
どういう気持ちで、「雛美は綜士のことが好き」と確信したんだろうな、とか。
どういう気持ちで、綜士に雛美のそばにいるよう焚きつけていたんだろう、とか。
こう、全員の気持ちが一方通行で、しんどい恋愛小説が好きな人間にとって、考えれば考えるほど最高なんですよねこの周回…一生読んでられる…。
最終19周目の2人
さて、じゃあ、すべてがリセットされた芹愛と、最後に残された綜士が今後どうなるのか!?なのですが。
16周目か17周目で話が終わっていればあるいは、とは思うのですが、19周目…この後2人がくっつくことはまあないだろうな…。
本編ラストの綜士は自己肯定感があがっているし、杏奈さんの一件で多少芹愛の不信感も和らいだ…かな?と思うので、関係改善はできると思います。
綜士の努力次第ですが。
すると芹愛側が意識する、はありえるかもしれないのですが、それ以上はやはり綜士の方が無理なんじゃないかと。
綜士があの事件を乗り越えるには、かなり強い何かがないと駄目だろうなぁと思って。
謝罪して、信用を得て共闘した記憶がある16・17周目なら、綜士が自分を許せるかもしれないんですが。
芹愛の方が一から全部記憶をなくしているので、やはり綜士が小学生のときのことを乗り越えられなくて、例え付き合ったところで辛いだけかなーと思います。
なのでもう、2人が笑い合う未来はないと思います。
でも、すれ違ったらふつうに挨拶をしたり、お互いの結婚に際してお祝いを贈り合えるような、そんな関係になれていたらいいな、とは思ったり。
…という解釈に今回落ち着きました!
いかがでしたでしょうか、同じような解釈の方がいたらうれしい。
おわりに
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
『君と時計と噓の塔』、何周しても沁みますね…。