昨年バズっていた『誰が勇者を殺したか』を遅ればせながら読みました!
ダークファンタジーやパーティーものは得意じゃないので後回しにしていたのですが、ふつうにめちゃくちゃ面白かったし、もっと早く読むべきだった…!
というわけで感想書きます!
ネタバレ注意ですーーー!
感想!
ダークファンタジーと見せかけてまさかの
読む前は、雰囲気的にいわゆるダークファンタジーの類と考えていたのですが、読んでみるとそんなことないですね。
そもそもダークファンタジーの定義ってなんだって感じですが、個人的には露悪的とか厭世的とかそういう感じかなぁとぼやっと思っています。
その点で言うと、全然全くそんなことはなく、希望あるハッピーファンタジーでした。
様々な登場人物の目線で物語が進んでいったけれど、ラストがお菓子屋さんの日常で終わるとは想像もしなかった…(笑)
なんて平和でハッピーな作品なんだ。
こういう、登場人物誰も置いていかない甘くて優しい話は大好きです。
誰が勇者を殺したか、の問い
さて、タイトルからストレートに投げかけられる「誰が勇者を殺したか」。
単なる犯人当て系の話ではなく、こういうふうにわざわざ投げかけがされている場合、「みんなで殺した」となる場合が多いようになんとなく思います。
この作品の場合は、序盤で市井の無責任な声も取り上げられていましたし、「民衆の声が殺した(勇者でいられなくした)」という方向になるのかな~と思っていましたが(それはそれでひとつの解ではありましたが)、もっと単純ではない物語で、素直に面白かったです。
問い自体が無効になるパターンだったか~…。
「アレス」を殺したのは誰かというと。
最後に楽にしてあげたのはザックで、原因となったのは魔人で、遠因となったのは勇者に指名したアレクシアの母と、勇者として期待をかけた村の人々。
ザックとアレクシアの母はそれぞれ彼の死を背負っているけれど、これに関してはこんな世界が悪いっていう感じで、彼らに責任はありません。
それぞれの苦悩に胸がギュッとなりました。
でも、その「アレス」は勇者ではありません。
本当の勇者はザックで…。
じゃあ「勇者ザック」を殺したのは誰だっていうと、アレスを死なせてしまったという出来事ですよね。それで表舞台から消えたわけですから。
でも「ザック」本人は死んでいない、殺されていない。
だから「誰が勇者を殺したか」の問いは、突き詰める必要のないこと、というわけです。
そして、そもそもこういうネガティブな問いがそぐわない、愛のある作品だったと思います。
この作品で大事なのは、「勇者アレス」を生かしたのがザックだったということ。
自分の無力を後悔して、死なせてしまった友だちの名前で途方もない努力をして、終わったら潔く退場する。
自分に無頓着で目的がシンプルなところが、なんとも愛おしい主人公でした。
文章が素晴らしく読みやすい
ラノベに限らず、文章の上手い作家さん・お上手でない作家さん、文章が自分に合う作家さん・合わない作家さんというのははっきりあります。
内容が面白くても、文章が駄目でギブアップした作品がある人は多いのではないでしょうか…。
駄犬先生の作品は今回初めて読んだのですが、めっちゃくちゃ文章が魅力的で読みやすい!
地の文を斜め読みしがちなダメ読者なんですが、そんな私でも一文一文吸い寄せられるように読んでしましました。
まず開始1ページからもう引き込まれる。
頻繁に視点が変わる複雑な構成で、内容も重たいのですが、全く引っかからずにするする読めてびっくり。
重厚さと読みやすさはトレードオフではないんだなと感じました。
いろんな角度から人柄が浮かび上がるのが面白い
さて、本体の話に戻ると、アレクシア姫によるインタビュー、ザック本人の視点、仲間から見たザック、という構成を繰り返し、ザックと仲間たちの姿が浮かび上がります。
アレクシアに語って聞かせた姿と、実際に仲間たちが感じていたことの差異、それらと本人の姿との差異が興味深い。
素直じゃない仲間たちがザックのことを愛していて、すっとぼけたザックが彼らとの日々を(ざっくりまとめると笑)幸福に感じていたのが伝わって、胸が温かくなりました。
犯人当てのドロドロストーリーが始まるのではなかったのか…私はいったい何を読まされているんだ…(嬉)って感じで、最後までまさかの裏切りがなかったのもとても良かった。
ストレートな恋の話だった
あと、ラブコメ好きとして嬉しかったのは、作品を貫くのがお姫様の恋だったことですね~。
好きな人と結婚する約束を果たしに来るの痺れた。
ここでこう落とすかと。
最高。
ラノベミステリーちょっといいな
昨年からブームになってきているラノベミステリー、一応ミステリー好きなんですけど、ぶっちゃけあんまり興味ありませんでした。
というのも、ラノベミステリー云々以前に、「さあ事件が起きました!解決しましょう!」っていうミステリーするだけのミステリーが苦手なんですよ~…。
大好きな米澤穂信先生が「学校に死体が転がっていたらおかしいから、そういう話を書きたいときは舞台を変える」というようなことを昔インタビューでおっしゃっていたんですけど、そういう感覚が大事だなぁと思っていて。
ミステリーしかしていないミステリーって、殺人事件でも日常の謎でも、物理的手法重視で動機が雑。
そのへんが気になってどうしても感情移入できないんです。
(そもそも感情移入して読むものではないという説もある)
ラノベミステリーもそういう感じで好みに合わないものが多い印象だったんですけど、いやぁ、ファンタジーはいいですね!!
世界観が凝っている作品はラノベの得意分野だし、特殊設定ミステリーは相性いいんだろうなと『誰が勇者を殺したか』を読んでいて思いました。
『誰が勇者を殺したか』に関して言うと、犯人当てに固執して凝りすぎてないのがめちゃくちゃ好み。
アレスとザックの入れ替えも割とすぐ察しがつくし、そこで読者を騙すぞ驚かせるぞっていう感じではなくて、
しっかりとした物語があるうえで、ミステリーをスパイスとして使うのがすっごく良い。好きです。
おわりに
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
個人的ハイライトとしては、マリアのおかげ(?)で回復魔法を習得できたときのザックが、ナチュラルに失礼でアホで好きです。