ようやく「八咫烏」再読したぞ~~~!ということでつらつらと感想書きます!
『烏の緑羽』までの内容です!
ネタバレ注意です!
感想!
雪哉が嫌いになれなくて困っている
最初に言っておくと、私は雪哉大好きオタクです。
雪哉アンチさんはこの記事読んでもぜんぜん面白くないかも(笑)
『烏は主を選ばない』のときの生意気で聡明な雪哉がも~~~大好きでして、そこからはまあ下り坂というか(笑)、どんどん様子がおかしくなるわけですが、いっこうに嫌いになれない…。
『楽園の烏』でのヒールっぷりを見てもやっぱり嫌いにはなれず、ただただ辛い。
もちろん「楽園」から読んでいたら、こんな悪辣なおっさんを好きになることはないでしょう。
でも、生意気な少年時代を知ってしまっているから、そして、なんというか本質として合理性の鬼なところは昔から変わっていないので、「雪哉は変わってしまった…」という感じでもなく、
ただ今はなんかいろいろ噛み合わなくなってしまっているだけではないかな~と思っちゃうんですよね。
これから雪哉は無惨に倒されてしまうのかもしれないですが…なんかそれだけでない展開になるといいなと、ずっと願っています。
雪哉に幸あれ。
1周目と2周目でかなり違った感触
新刊が出るたびに再読するする詐欺をしていた私ですが、今回ようやく2周目に入れました。
正直1年おきに最新刊だけ読んでいると本筋はさっぱり分からなくなっていたので(雪哉カワイイ!だけで読んでた)、2周目でようやく全貌が分かった感じです。
1周目でスルーしてそのまま忘れていたところに気付いたり、発見があってなかなか面白かったです。
一番びっくりしたのは、雪哉にとっての茂丸の存在の大きさ。
正直『空棺の烏』自体、箸休め回というか…剄草院メンバー紹介くらいに思っていたので、読み返して思ったより重要な巻だなと気付いたのですが…。
(いつものように)気に入らないやつを痛めつける雪哉に対し、茂丸が「それ以上はやめろ」と言って、「茂さんがそう言うなら」と雪哉が引くシーンがあるじゃないですか。
あっ、もうこの時点で茂丸って雪哉にとってこんなに大きい存在なんだ…ってびっくりしました。
「空棺」でスルーしちゃうと、茂丸って『弥栄の烏』であっけなく死んじゃうキャラっていう印象が強くて。
(そこでも雪哉こんなに取り乱していたっけとびっくりした)
ここが本当に雪哉のターニングポイントになったんだなと実感しました。
「単」がやはり素晴らしい
さて話は戻りますが、再読して改めて『烏に単は似合わない』が素晴らしいなと!
単行本版の全力で表紙詐欺しにきてる感じが大好きなのですが、からの1章あせび回のヤバさと言ったら!
答殿できなくなった姉の気持ちを思いやるシーンには「いやお前…」となり、そこからの天然主人公ムーブに震え、最後に「ここが私の居場所なんだ」的なこと言い始めたときには失笑…。
まじで何言ってんだこいつ…。
もちろん1周目のときは素直に騙されてあせびに肩入れして読んでいたので、サイコパスだと分かって読むと、見える景色が全く違いますね。こわいんだわ。
ただそのミステリー的な構成の上手さはさておき、あの内容で読後感が良いのが「単」は最高だと思うんですよ。
ただのミスリードと思わせたプロローグを、ピュアな恋のお話として裏返して見せるという仕掛けが大好き。
真の金烏が死ぬとかそんなことある??
読者の予想の上をついてくる「八咫烏」シリーズ、正直誰が死んでもおかしくないと思っていましたが、奈月彦だけは死なないと思っていました。
この世界を救うヒーローポジションなので。
結局ただの八咫烏にすぎない雪哉が死ぬところまでは想定内だったんですけどね…そこは覚悟していたのですが、まさか奈月彦が先に死ぬとは。
しかもすんごい馬鹿みたいな理由で…。
特別な力を持つ「真の金烏」が死んじゃうとか、もうファンタジーとしてはめちゃくちゃですよ(笑)
「楽園」で全く出てこなくておかしいなとは思っていましたが、こうもあっさり死なれると言葉も出ない…。
本当に展開が読めなくて面白いし、読者への容赦のなさがすごい。
藤波のことは本当に忘れてました…
「追憶」で凶行に及んだ藤波ですが、復習せずに読んでいたので、正直本当に存在を忘れていました。
長束の感想がほんとそれ。
「妹?藤波…?いたっけ」って感じで、そこから「単」の内容をなぞっていく過程で、あせびに異様に懐いていたというところで「あ、いたかも?」くらい、早桃を殺したくだりで「あ~~~そんな阿呆もいたな」とぼやっと思いだしたくらい。
本当に影が薄くて、たぶん私のような不真面目な読者はみんな記憶に残っていないんじゃないかと思うんですが、その誰からも忘れられた…というところに藤波の絶望を持ってくるとは…
いや、こんな伏線の回収の仕方あります?ちょっとすごくない??
藤波に関しては、いくら雑魚とは言えほっといてた奈月彦が悪いとは思いますけどね。
適当なところで償いは済んだとして、どこかに嫁がせるべきだったと思いますが…。
いまさら藤波が嫁いだところで四家のパワーバランスに特に影響なかったと思うけど、強いて言えば母の生家である西家が一番影響が少ないでしょうか?
個人的には、顕彦のもとでなら、他の訳あり女性たちと同じく幸せになれたんじゃないかなと思います。
ただ身分が高すぎて側室にするわけにもいかないし無理だったろうな。
ただのまあまあな宮烏だったらもうちょっとましな人生を送れたろうに…
顕彦が駄目なら無難に明留あたりに嫁がせておけば、しっかり大事にしてくれたんじゃないかと思いますけどね…(明留の最期を思うとあまり言いたくないが)
明留がいとおしい
さて、個人的にシリーズ内で一番株を上げた人物は明留だと思うのですが、本当に最期が立派でしたね…。
重要人物が死ぬ展開は嫌いなのですが、このシリーズに限ってはもうそういうもんだから仕方ない。
誰が死んでもおかしくないと覚悟していて、『玉依姫』のときには死んだのは雪哉だと思って「弥栄」までずっとそわそわしてたし、大怪我したのは真赭の薄の様子から完全に明留だと思って泣いていました。
澄尾だと分かったときは「え!!???」となると同時に「明留よかった~~~」となったものです。
(その数年後に出た「追憶」で無惨な最期を迎えるわけですが…)
貴族のお坊ちゃんらしく常識がズレているところはあるものの、その分スレずにまっすぐで、心優しくて、おちゃめなところもあって。
人として本当に魅力的なんだよな~。遊学したらまあまあモテ散らかしてそう…。
根が素直だから、剄草院ですぐ矯正されたし、千早とゆいちゃんだけでなく救われた人がたくさんいたろうな。
お坊ちゃんだった明留が、あんな壮絶な死を迎えると誰が想像したでしょうか。
奈月彦を守り切ることはできなかったけど、迷わず闘って下手人を逃がすまいとした執念が本当に立派だった。
好きなキャラが死ぬシーンで初めてぐっときました。
明留は最期の日まできっと幸せだったと思うけど、来世も絶対幸せになってほしい。
小物ぽかった長束にようやくスポットが…!
「追憶」で過去回が終わり、「楽園」の後へ戻ると思ってワクワクして読み始めた『烏の緑羽』、また回想回でずっこけたのですが、読み終わるとなかなか良かった。
途中「短編集でやればよかったんじゃ…?」とも思ったけど、通して読むと長束と路近の関係がよく分かって良い。
何より大事な話を外伝でやるスタイルは好みではないので、これはこれで良いなと思いました。
(最後うっかり路近カワイイと思ってしまった…不覚…)
私の中で長束って、藤波よりはましかなくらいの存在で、名前は覚えているけどいまいち見せ場のない、位だけ高いキャラという認識でした。
位が高いから発言力はあるけど、自身はそんなに有能でも人望があるわけでもないという。
「追憶」のラストでは、また流れに翻弄されているだけの雑魚感が出ていたのですが、それが「緑羽」でひっくり返って熱かった…!
浜木綿・紫苑逃走の裏に長束がいたとは全く予想しなかったです!!
「緑羽」ラストの反撃の予感が最高に好みすぎる。
ただ、雪哉推しとしては、ここで反撃に出るのがなんで雪哉じゃないのかな…という気持ちがあります。やっぱり。
初めは主人公格で、こういうときに読者をたぎらせるのは雪哉だったはず。
なんでここで長束になっちゃったんだろうな…
雪哉が凪彦についていなければ、山内は内戦で大混乱になっていたはずで、圧倒的に正しい判断をしているのに、なんで悪役になってしまうんだろう。
「あの忌々しい博陸候」とか言われると、「お前らが雪哉をそうさせたんじゃんか~~!」という気持ちになってしまう。
田舎でのんびり暮らしていた雪哉を無理やり引っ張ってきて、今までずっと頼ってきたくせに、敵に回ったらこれかよって…
何が雪哉を狂わせたのか
じゃあその雪哉はなんでこうなっちゃったんだって話なんですけど。
1周目のときは、「楽園」で敵をたくさん作る雪哉にびびったものですが、読み返すと最初の方からしっかり伏線が張られていましたね。
やっぱり昔から合理性の鬼なところは変わっていなくて、でも感情がないわけではなく、むしろ愛情深いんですけど…
ただ優先順位をつけるのがめちゃくちゃ上手くて、思い切ったら迷いがないんですよね。
それが周囲からは感情が死んでるように見えて怖い。
奈月彦はそのへん理解はしていた、あとは茂丸みたいに大らかな人は受け止められていた。
その茂丸が亡くなって心を許せる人がいなくなったところに、奈月彦の裏切り(と言っていいと思う)で完全に心折れた感じでしょうか。
「主」「黄金」であんな風に絆を深めていった主従が、最後こんな結末を迎えると誰が想像したでしょう。
もうめちゃくちゃですよ。
奈月彦が遺言でわざわざ浜木綿を立てたのは何か思惑があったと思いたいですけどね…。
完全に意味不明で、死後の状況を読み誤っていたとしか思えない。
凪彦の存在を知らなかったなら、次の金烏は長束のはずだから、兄を立てるならまだ分かる気もするのですが。
梓と雪哉の愛が尊い
そんな雪哉ですが、やっぱりどうしても嫌いになれないのは、故郷と家族を何より大切にしていることを知っているから。
継母・梓と雪哉の絆が本当に尊くてもう…。
幼い雪哉が本当の母親のように梓に甘えるシーンがもう可愛くて可愛くて…。
雪哉が中央に行くときに実の父より納得して喜んでる梓さん、そしてひねくれてるのに好物は母上のごはんな雪哉、もう最高じゃないですか??
第二部で垂氷郷の様子があまり見えないのですが、みんなどうしてるんだろうなぁ。
雪哉の愛は今も垂氷郷にあるはずなので、最後は母上がキーになるんじゃないかな~~と期待しているのですが、40過ぎのおっさんと母上の愛とか見せられてもみんな困るかな…?私は見たい。
葵はいったい誰なのか
そして不穏な動きを見せている第二部。
やはり気になるのは葵でしょうか。
「追憶」「緑羽」を素直に読むと葵=紫苑なのですが、読者の予想通りに進んだことなんかないのでもうひとひねりありそうなもの。
作中で触れられているように、葵本人も親戚である奈月彦に似ていてもまあおかしくないような。
病弱だった葵が本当に出てきたという可能性も自分の中では残しています。
あと気になるのが、真赭の薄と澄尾の第三子。
雪哉の遊学前に真赭の薄が出産のために宿下がりをしていた描写があるのですが…。
その代わりに浜木綿に付いていた菊野が、奈月彦が亡くなったときにも浜木綿たちが逃げる囮になっていたので、真赭の薄はまだ戻ってきていないようなのですが、第三子は無事産まれたのだろうか。
生きているなら何かしらの意味はありそうだな~~と思っているのですが、考えすぎかなぁ。
おわりに
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
ところで、雪正は中央の要人になった雪哉を見てどう思ったんでしょうね。
ぼんくらを装っていた雪哉のやさしさと、そうせざるをえなかった窮屈さをしっかり理解してほしい。