大好きな『ふたりで恋をする理由』をさらに掘り下げていきます!
未読の方いませんか?ここからネタバレしますよ…!
というわけで、
今回は、オビくんの何がいけなかったのか、ということをつらつらと考えていきたいと思います。
ちなみに美園推し読者の感想なので、オビ推しの方が読んで気が晴れるようなことは書いてないと思います…。
オビくんの何がいけなかったのか
いけないところはなかった
終わってみれば、ただ横恋慕しただけな感じになっちゃったオビくん。
いったい彼の何がいけなかったのか…?
と言っても、これは作中うららちゃんが言っている通り、「悪いところなんかない」だと思います。
ストレートに想いを伝え、誠意のある言葉だけを発し、かつ気を遣うだけでなく「チョコが欲しい」とおねだりまでしていたオビくん…。
一目惚れなので最初の展開が早いですが、実際に告白するまではある程度時間をかけていましたし、少女漫画的には満点、教科書通りの完璧な対応と言えます。
そう、あの時点でできることはすべてやっていたんです。
たいがいのヒロインなら、失恋後にここまでされたら落ちてます。
それなのに、なぜ届かなかったのか…これは、完全に相手が悪かったなと。
うららちゃんは能動的に恋をしたい子だった
というのも、肝心のうららちゃんは、圧倒的に「愛されるより愛したい」派。
美園くんへの気持ちを自覚したときの気持ちが「この人に私のあげられるもの全部あげたい」ですからね…。
自分を好きでいてくれるだけじゃ駄目で、自分自身が心から好きだと思える人でないといけないんです。
好きって言ってくれてるしとりあえず付き合っちゃえ~~!と軽く考えてくれる子じゃないんですよ…。
好きになった相手が悪かった、それに尽きます。
本当にオビくんエンドってありえたのか?
で、疑問なのが、そもそもオビくんエンドがありえたのかどうか。
最終巻のあとがきで「美園・オビどちらもあえりえた」(どちらとも付き合わないのもありえた)とおっしゃっていますが、読み返せば読み返すほど、うららちゃんの気持ちは最初から美園くんに向いているように思えてなりません。
愛慈先輩とのゴタゴタの時点で、うららちゃんは美園くんのことを「ホッとする人」と感じています。
この「ホッとする」っていうのが個人的にはすごく引っかかる。
「いっしょにいて安心する」っていうのは、ラブコメにおける最大級の「好き」の表現だ、と私は思っています。
どんなヒロインでも、好きな人といるときは、少しゆるんだ安心した表情をするものです。
ふつうは、「ドキドキ」→「ホッとする」と感情が変わっていくところ、いきなりすっ飛ばして「安心する存在」に収まったのが、うららちゃんにとっての美園くんだと思うんです。
そうです、つまり、愛慈先輩に告白する前から、うららちゃんは美園くんを好きだった(無自覚)という説を唱えております…!
美園くんとアイス食べた後アイスがお守り的存在になったり、美園くんにいれてもらったのがきっかけでハチミツ入りミルク好きになったり、これが恋じゃなくてなんなのか。
愛慈先輩への気持ち、美園くんへの気持ち
じゃあ愛慈先輩とのゴタゴタはなんだったんだよ!ってなると思うのですが、もちろん、愛慈先輩と話していて楽しかったのも、フラれて傷ついたのも、すべて本当です。
ただ、愛慈先輩と美園くんだと、気持ちの置き場所が違ったのかなと。
「心の真ん中」という言葉がキーになる作品なので、それにならって表現してみたいと思うのですが、まずうららちゃんの気持ちを、こう、球体だと考えまして…
その中で、愛慈先輩がいたのはここ。球体のてっぺん。
ここって、一番上だから目立つし、上から見れば中心ではあるけど、けして球体のど真ん中ではない。
で、美園くんが入ってきたのがここ。まさに心の真ん中。
てっぺんの「ドキドキする場所」だけを「恋」と思っていたから気付かなかっただけで、ずーっとうららちゃんの心の真ん中に美園くんがいたんじゃないかな…?
そして、この「ホッとする場所」を「恋」と定義するには、ちょっと発想の転換が必要。
だから答えを出すのに時間がかかったんじゃないか。
ずっと心の真ん中にいた美園くんの存在がどんどん大きくなって、あふれそうになったのが、NYゴタゴタの頃のうららちゃんなんじゃないかと…。
というわけで、ちょっと話が脱線気味でしたが、こういう観点で見ると、オビくんはたまたまタイミングが重なったからいっしょくたになっていただけで、
うららちゃんが答えを出すまでずっと、美園くんベースで悩んでいるように見える…ような。
美園くんがいなかったとしても…?
では、仮に美園くんがいなかったら、オビくんが美園くんの場所におさまったのか?というと…。
うーん、どうなんだろう…。
オビくんの恋の仕方(ガンガン攻める)が、能動的に恋したいうららちゃんと相性が悪いのは変わらないので、結局うまくはいかなかったのかな…。
中間報告のときの「オビくんとは付き合えない」がすべてな気がします。
でも、うららちゃんに彼氏や好きな人がいるわけでもないのならオビくんも諦めがつかなかっただろうから…。
「じゃあこのまま好きでいてもいいよね!?」(少女漫画あるある)となり、うららちゃんは罪悪感で疲弊し、オビくんもボロボロになるバッドエンドが待っていたのかもしれない…。
オビくんの敗因(強いて言えば)
以上で考察というか感想は終わりですが、強いて言えば!あえて挙げるとすれば、オビくんの敗因はうららちゃん以外への配慮のなさだったのかなと思います。
愛慈先輩のことを「くそやろう」呼ばわりしたのも、読者からすると「よく言った!」ですが、ふつうに考えたら話で聞いただけの人をそんなふうに断定するのはな…。
また、相手の好きだった人を悪く言うのは、相手を想ってのことでも基本的には悪手。
うららちゃんも怒っていましたが(うららちゃんのこういうところ本当に好き)、ふつうに良い気持ちしません。
また、美園くんを敵視しすぎて、全体的に対応がちょっと…。
特にエレベーター閉め出しは、ちょっといただけない。こわいよ。
2人がもともと友達関係なら好きにすればいいんですけどね、単に「友達の友達」でしかなく、うららちゃん抜きでは関係が成立しないレベルじゃないですか。
そういう知り合い程度の他人に一方的にこういう態度をとるのは…。
恋敵である前に、好きな人の友達なんですから、最低限の敬意は持つべきだったのかなと思います。
メタ的に考えても、ここまで好き勝手したオビくんの方が勝っちゃったら美園くんがあまりに気の毒で後味が悪く、やはりオビエンドはなかったのでないかと…。
おわりに
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
最後ちょっとディスったのでバランスとりますが、退場するときのオビくんの対応も本当に満点!
表情で内容を察し、言いにくいだろう返事を促してあげ、うららちゃんが幸せになることに罪悪感を持たないように、強い言葉で美園くんのところへ行かせる。
うららちゃんに対しては本当にめちゃくちゃ良い男なので、その他大勢への対応がちょっと惜しかったですね~。
オビくん、私はなんだかんだで仲良くなっちゃうオビくんと美園くんが見たかったよ…。