浅倉秋成先生の『フラッガーの方程式』を読んだら、すんごい熱くて最高だったので感想書きました。
ネタバレありなので、未読の方はご遠慮ください。
とりあえずめちゃ面白いです(雑)
感想!
無茶苦茶な伏線回収が鮮やか!!
無駄にハードルの高いあらすじは話半分に読んでいましたが、いや本当にありとあらゆる伏線を回収していったよ。
上手いなと思ったのが、荒唐無稽なギャグテイストのおかげで、全ての言動が不自然だから伏線に気付きにくいこと(笑)
あれも繋がったよ!あれもあれも!てか全部佐藤さんの病気を治すために繋がってる!?前半は壮大な前フリだったんか…!
てな感じで、最後は大興奮でした。
メタだけどメタじゃない
テーマ的にメタっぽい会話が目立つんですけど、物語としてはメタじゃないんですよね。
えーと上手く言えないんですけど、私たちが「フラグ立ったな」みたいな話をするのと同じ次元で、現実にメタネタを持ち込んでいるだけ…というか。
変わったシステムはあるけど、だからって俯瞰してオチまで見通せているわけではないし、大きな力に翻弄される感じがすごく良いなと。
普通の作品だったら徹底的に黒子に徹すると思われる村田さんが、最後いろいろ全部かなぐり捨てて、涼一を止めに来たり車走らせたりするのが、なんかもう最高だな…って思うんです。
人が死ぬ展開への徹底的批判は、よくぞ言ってくれた!!
個人的に共感しすぎて泣きそうになったのが、「人が死ぬ」感動展開をばっさり斬ってくれたこと。
正直、最初の選択肢に「幸福」と「感動」が並んでいる時点で、ヒロイン死ぬじゃん…って思ってたんですけど、そんなところに着地しないのが浅倉先生!!
私も本当にお涙頂戴展開(嫌な言い方)が苦手でして、なんならスプラッタより感動系の人死ぬ話の方が嫌なくらい。
お涙頂戴系はとかく安直に感じられて好きになれないんです。
殺しときゃーいいや、なんか格好つくから。みたいな。
でも、話にオチをつけるために人が死ぬなんて、あんまりじゃないですか…。
しかしそんなひねくれたことを考えているのは私だけだろうなと思っていたのですが、『フラッガーの方程式』でそんな私の気持ちを完璧に代弁してくれて鳥肌立ちました。
「まとまりのない話を強引にまとめるために」死亡シナリオになった。
作品に刺激的展開を加えるために、命が奪われようとしている。
だけどそんなの間違ってる、人が死んだら悲しいし泣けるのは当たり前…
フィクションに触れる中でずーっと思っていたことばかりで、だからなんだって話ですけど本当に感激してしまいました。
浅倉先生まじで信じられる。
浅倉作品らしい終盤怒涛の展開
正直、中盤までは駄作感がすごいな、と失礼ながら思っていたました(ごめんなさい)。
読みやすい文章とテンポの良い展開で難なく読めるんですけど、いったい私は何を読んでいるんだろう…という気持ちがあり(笑)
ですが、佐藤さんルートに入ってからの怒涛の展開がすごかったですね。
私本当に、「最後みんなで叫んで走ってぐわっと解決に導く」みたいな勢いのある展開が大好きでして(語彙力)。
涼一がフラッガーシステムに向かって叫ぶところも好きだし、村田さんとの言い合いも最高だし、そこからの怒涛の伏線回収も本当に熱くて、自分の好きが全部詰まっている!と感じました。
また、涼一の「死なない心当たり」に関しては本当に忘れていたので、あまりの上手さと、背景となる出来事のくだらなさのギャップに爆笑しました。
本当に前半を上手く使いすぎなんですよ…!駄作感すら計算だったとは…。
ちゃんとツボを押さえたラスト
あと最後も私の好きなものが詰まっているんですけど、まず「未来は不確定」系の終わり方が大好物でして。
ループものとかでもよくあるんですけど、「ここからは何も決まってない。自分たちで決めていくんだ」みたいな真っ当なメッセージが大好きで。
『フラッガーの方程式』もフラッガーシステム解除後のエピソードで終わっているのが何より尊い!
そして、全部を見せないラスト!
ハッピーなことは確定させつつ、肝心のところは見せない、みたいなじれったい感じが最高。
ニヤニヤしてしまいました。
ところで、浅倉先生がそんなにラブコメがお好きとは知らず、あとがきまで読んでびっくりしました(笑)
そこまで極めた人だからこそ書ける作品なんだな…。説得力が違う。
『六人の噓つきな大学生』とかとの振り幅がすごい。
おわりに
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
浅倉先生本当に推せる。