辻村深月『名前探しの放課後』のネタバレ感想記事にちらっと考察入れたのですが、スペース的にあまり丁寧に書けなかったので、別記事で詳しく書き直そうと思います。
ネタバレしているので未読の方はご遠慮ください。
彼女は何をどこまで知っていたのか
志緒ってほんとに部外者でいいの？？
すべて終わって振り返ってみると、名前のある藤見生で、今回の件にまったく噛んでいないのは元カノ絢乃ちゃんと志緒くらい。
一周目終えてまず疑問に思ったのが、「志緒ってまじで何も知らなかったの？？」でした。
ハルと志緒の関係
ここが結論というか発端なのですが…
もし、志緒が最初から最後まで何も知らないとしたら、友春にとって志緒はどうでもいい人、ということになる。
どうでもいいというか、どう思われても構わない人。
というのも、あの狂言暴力事件の前に、志緒が友春とあすなの共通の友人であるということは全員が知っています。
（友春の件の話し合いであすなが申告しているから）
その上で、あすなが河野のもとへ行く（そこで狂言いじめの瞬間を目撃させるつもり）ときに、「友達と一緒に行くつもり」とも言っています。
それが志緒のことだというのは明らか。
となると、「友春の友達に嘘いじめの現場を見られて大丈夫なのか？」ということは天木や秀人なら当然考えるでしょう。
そして、そもそも「友春がいじめをしているという筋書きのままでいいのか？」ということも含め、友春本人にも志緒との関係性を確認したはず。
友春本人が友達をなくして困るとかの以前に、志緒が「友春はそんな人じゃない！」とかってあすなに言い出したりしたら計画丸つぶれで最悪ですからね…
それなのに、もし志緒が何も知らなかったとしたら。
「そんなに仲良くないし大丈夫」と友春本人が判断したということになり…恋とかじゃないにしても志緒の側が友春に好意を抱いているのは明らかなので、あまりにも悲しい…
知らずに友春と友達を続けることが可能なのか
逆に志緒の側からも考えてみます。
もし志緒が何も知らなかったとしたら、あすなと一緒に友春が河野に暴力をふるうところを目撃した件は、かなりのしこりになるはず。
ああ見えて常識的な彼女のこと、いつもの様子から「おかしい」と思ったとしても、実際暴力をふるうところを見ちゃっているのですから、距離を置くのが妥当はなず。
しかし、実際はその後もグループで遊ぶ程度には仲が続いているよう。
それってちょっとありえなくないか。
選択英語クラスの座席の件も傍証に
ついでに言うと、少し話がズレますが、河野とあすなの接点となった英語クラスの座席の件。
そもそもの話、都合よく河野があすなの席を使っているというのがまず考えにくい。（出来過ぎ）
さらに、終盤で河野があすなの席を使っていないのを見て、「席替えしたんだな」とあすなは感慨深く思っていますが、選択クラスでわざわざ席替えなんてするかなー。
というところで、そもそも河野はあすなの席は使っておらず、仕込みのためにノートやらペンやらを入れただけ、と個人的には思っています。
すると、選択英語で河野と同じクラスの志緒が、その後「河野、あすなの席使ってないじゃん」と言ってこないのはおかしい。
最初意識してなくても、一度話にのぼったら、ついつい意識しちゃうと思うんですけど。
これも「志緒は最初からすべて知っていた」説を補強すると考えています。
願望込み仮説：「志緒はすべて知っていた」（そうであってくれ）
というわけで、個人的には「志緒はすべて知っていた」説を推したい。
仲間に引き入れたタイミングとしては、あすなが「志緒と友春が友達」と言った後、安全策として引き込んだ、が有力ですが、
友春からの申告、もしくは天木の情報網（？）で、友春の件をあすなに持ち込み時点ですでにすり合わせ済みだった可能性もあるかなと。
（志緒があすなに、いつかの件でからかい半分の探りを入れているあたりが怪しい。あの直前にいつかたちが接触した？）
あまり正直にすべてを話すと、逆に信用を失ってあすなにネタバレされる恐れがあるので、おそらくタイムスリップ云々は伏せた上で、それなりに筋の通った説明を天木がこしらえたのではないかと想像しています。
どんな説明にしろ、「あすなのためにいつかが頑張ってる」ということは伝わるでしょうから、絢乃ともめていたときに、いつかがあすなを好き前提で牽制しているのもうなずけます。
ただ、だったら一言「実は志緒も仕掛け人だったよ」と書けばいいだけなのにそれをしなかったということは…やはり何も知らなかったということなのか…
それ以外は「全部知ってた」で矛盾ないと思うんですけどね、どうでしょう。
もし本当に何も知らなかったとしたら…、最初から最後まで一人だけ蚊帳の外で、ただ友春が暴力男だと知っただけということになり…志緒の扱いが雑すぎて泣きそう。
おわりに
しょうもない考察というか願望でしたが、最後まで読んでくださり、ありがとうございましたー！
