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【解説】辻村深月『名前探しの放課後』全伏線を解説します<後編>

【名前探しの放課後】伏線全回収します<後編> 一般文芸
一般文芸
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『名前探しの放課後』全伏線を解説します、後編です!

ここからは「こんなとこあったっけ?」くらいの細かいところまでちみちみと拾っていきたいと思います。
後編まで読んでいただければ大体の疑問は解消できるのではないかと…!

前編はこちらです。
大事な話はこちらでしています。

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こんな伏線もありました

自殺者について

これについてはミスリードも多いのですが、意外とバレずにはっきり言っているところも多数あります。

プロローグ

まずいつかのプロローグで、自殺者が見つかった情景が語られた後、実ははっきりこう書いています。

死んでしまった、クラスメート

辻村深月『名前探しの放課後』上巻11ページ

この時点で、いつかとクラスの違う河野は自殺者ではありえないわけですが、プロローグなんて何も情報がない状態で読んでいるので記憶に残りにくいですよね。
私は全く覚えていませんでした(笑)

読み返して、こんなところでもう伏線を仕込んでいたのかとびっくりします…。

ターゲットの感触

また、河野を体育倉庫から救出した後、天木・秀人・いつかでこんな会話がありました。

「脈はあると思うか、あいつ」(略)
「いけると思う」
(略)
「あいつの印象は?」
「すこぶるいい」

辻村深月『名前探しの放課後』上巻355ページ

直前に助け出した河野のことを「あいつ」と読んでいると見せかけて、真のターゲットであるあすなの話をしてるという。
個人的に読み返して一番痺れたところ。めちゃくちゃ上手い…。

自殺者についての記憶

前編でも少し触れましたが、いつかが自殺者について語るとき、台詞で言って地の文で説明しない式で多くを乗り切っています。

電話を取った母の声。しっかり覚えている。だけどそこから先は―。
「―きちんと、覚えてないんだ。自殺の詳細」

辻村深月『名前探しの放課後』上巻72ページ

「遺書の内容は?」
「覚えてない。不思議だし、矛盾してるなって自分でも思うんだけど、自殺の事実以外は本当に何も」

辻村深月『名前探しの放課後』上巻107ページ

「まず確認だけど、自殺が起こるのはいつなんだ?」
「―二学期の終業式の日の夜。十二月二十四日、木曜日」

辻村深月『名前探しの放課後』上巻220ページ

また、地の文が興味深いこんなシーンも。

「悲しみの受け止め方から、関係性が分からないかな」
「ごめん、申し訳ないけど覚えてない」
これも来ると想定していた質問だった。あらかじめ用意していた言葉を返す。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻236ページ

ここまで露骨なことを言っていたのかとびっくりします。
一応意味は通っているけれど、勘の良い人はこのへんで引っかかってそう。

「(様子を)思い出せない」と言うことで、「その人物」自体を覚えているということは巧みにぼかしている、なんてシーンもあります。

いつかは、その三ヵ月間のことをほとんど思い出せない。「その人物」の教室での顔や行動、死を決意するまでの間に、どんな生活を送っていたのか。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻167ページ
えしゃ
えしゃ

こういうのを見つけるたび、いつか頭良いなーとしか思えなくなる…(笑)

意味が変わってくる文章

「不思議なんだけど、本当に何も記憶ないんだ」(略)
「本当に何も?」(略)
真剣に疑われているわけでないと知りながら、それでも声に力が入る。

223 途中省略

そしてここは聞き返してきた秀人への信頼ではなく、仕掛け人同士だから「本当に疑われているわけではない」という意味になるわけですよ…!

自殺後の対応

ちなみに、冷静に考えると、自殺した日の翌日に担任から電話がかかってくるというのも変な話。
対応に追われてそれどころじゃないだろうし、そもそもクラス全員3~40人に電話で説明してたら2時間くらいかかっちゃう。

もしその日に生徒を学校に呼び出すなら、連絡網でその旨だけ流して、あとは学校で直接話せばいい。
まぁ、すでに冬休みに入っているところ生徒を集めるか?も疑問ですが…。
(経験がないのでなんとも言えませんが、休み明けに全校集会するくらいのイメージ)

このへんも、子どもの空想だなぁって感じがしますね。

河野の遺書

あすながノートを見つけたとき

あすなが数学の時間に河野のノートを見つけた後、すぐに河野が回収に来ます。
あまりにタイミングが良いので、これはいつかが連絡したのかな。

と考えると、授業そっちのけでノートに釘付けになるあすなの一挙一動をいつかが見守っていたということか…。

河野の親

計画当初はまさかお互いの親に会うほどの関係になるとは思っていなかったからでしょう。

河野とその親との関係は悪い、親子仲が噛み合っていない、という体で「遺書」を書いたわけですが、実際に出てきた河野父はいかにも優しそうなお父さん。
河野との会話も普通に仲の良さそうな様子。

このときいつか目線の描写で…。

あの気のいい父親を責める遺書を書くことの心理状態を考えているに、違いなかった。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻146ページ

あすなの気持ちを推察することで自分の感想に触れるのを避け、さらに「自分もそう思いました」な感じを出しています。
ここも読み返すたびに上手いなぁと思います。

自分の気持ちを語らずに他の人の気持ちを推察してみるのは、なんとなくつかみどころのないいつかのキャラとも合ってるし。

狂言いじめ関係

最初にあすなに話を振ったとき

信じられない、というようにあすなが深くため息を落とす。当たり前だろう。いつかだって、同じ話を聞かされたら驚く。夏からこちら、隣のクラスにはそんな気配は微塵もなかったはずだ。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻359ページ

ここも上手くあすなの感想へ寄せていますが、「本当にそんな事実はない」としても矛盾しない文章です。すご。

友春が河野を蹴ってみせる

悪評をすりこまれすぎている友春ですが、「実際に河野に暴力をふるった」のは作中一度だけ。
あとはすべて、「閉じ込められた」「怪我をした」という結果や伝聞だけです。

公平で慎重なあすなのこと、聞いた話だけでは弱いかもと思ったのか、一度だけ、実際に暴力をふるう瞬間をあすなが目撃するようになっているわけですね。

志緒と河野にペンを渡しに行ったとき、それが起きます。
このとき、直前に天木とすれ違うのは、天木が「口外しないでくれ」と河野と友春のクラスへ頼みに行ったから。

とはいえ、完全に口止めするのは難しかったと思いますが…。
あすなの交友関係が狭いので、いけると判断したんでしょう。結局バレませんでした。

このとき天木が口実として?持っていたビデオは、みんなに見させていた映画で、たぶんこのとき友春からの回収だったのかな。
友春の「ロールプレイング」という単語をわざわざ作中で拾っているのが意味ありげです。

さて、ここでの暴力はもちろんフリです。
「まるで本人が意図的に大袈裟に転んでみせたのかと思うほど派手に」転んで見せたわけです。

えしゃ
えしゃ

河野プロスタントマンか?

ちなみに、ここで志緒が友春の暴力を目撃するところがアレすぎるので、別記事でゴリゴリに掘り下げています。

あすなの違和感

河野を体育倉庫から連れ出したとき

椿に対し「キミ、他校ってことはこの中の誰かの彼女なんでしょ?」と河野が言った後にあすなが感じた違和感。

特段回収されていませんが、このとき河野以外は全員私服で集まっているので、初対面で私服の椿ちゃんを見て「他校」と断定できるのがおかしい、ということだと思います。

実際はこれ以前の話し合いのときに礼華の制服を着た椿ちゃんを見ているので出てきた言葉だったんでしょうが、これは痛恨のミスだったろうなぁ。
後でしっかり怒られてそう、天木に。

本屋さんで

クリスマス直前、友春と遊ぶ河野を見かける前に、あすなは本屋さんで教科書コーナーを見て、「おかしい」となっています。

その後の騒動でうやむやになっていますが、これはもちろん「礼華の教科書が藤見と全然違う」ことに気付いたのでしょう。

まぁ公立とお嬢様校でカリキュラム同じってことはないですよね。冷静に。

とはいえ、ある程度学習することは同じはずなので、本物の「礼華の伝統のノート」からとれるところはとってきて、足りないところは椿ちゃんオリジナルで補ったのがダミーのテスト対策ノートの正体というところでしょうか。

河野の英語の席

河野が英語の授業のときに自分の席に座っていないのを見て「もう席替えするほど時間がたったのか」と感慨に浸っているあすな。

だけどこれ、そもそも河野はあすなの席使ってなかったんじゃないかなーと思うんです。

河野が偶然ターゲットであるあすなの席を使っていたとは考えにくいし、個人的な経験だと選択授業でわざわざ時間使って席替えなんてしないような…。

たまたま英語クラスであすなの教室を使っていることから、帰り際にペンやノートを仕込んだ、というのが真相ではないかと思います。

もちろん、席替えしてもおかしくないくらいの時間が経ち、その間に濃密な時間を過ごしたみんなの絆が強固になっているのは本当ですが!

水泳練習中の不自然な表現

水泳演習のときも、読み返すと引っかかる表現ばかり。

まずは練習開始当初の天木の発言。

最初の一週間は、大事な様子見の期間なのだと天木が言っていた。一日も欠かさず、やってみせなければ駄目だと。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻418ページ

単に河野に泳ぎを習得させるだけなら「様子見」ってなんだ、という話。
あすな自身から「水泳をやりたい」と言ってこさせるための「大事な様子見の期間」だったというわけです…!

そして、しばらく経ってからのいつかの発言。

今のままでは無理なのかもしれない、手応えを感じない、と、今日、練習前のいつかは言っていた。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻418ページ

これも、もちろん河野の泳ぎの伸びしろではなく、あすなの心が動いた様子が見られない、ということでしょう。
(実際は、分かりにくいだけで迷い始めてはいるんですが…)

これを受けて、翌週から天木はあすなをプールサイドまで下りて見学するように誘います。
そしてようやくあすなが決心!

計画に進展があったことに対し、いつかと河野の反応がこう。

表情が明るい。何故、とあすなが明確に思うより早く、彼が頷いた。高揚した気持ちを抑えられないように、再度頷く。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻429ページ

河野は、状況に進展があったことが嬉しくて仕方ないようだった。

辻村深月『名前探しの放課後』下巻28ページ

2人とも素直な反応が可愛くて可愛くてもう。

河野とあすなの会話

ここは伏線というほどではないのですが、個人的に大好きなシーンなので取り上げちゃう。

グリルさか咲の取材の話が出たときの会話。

「私も、一度くらいは出てみればいいと思うんだけどね。きっと、おじいちゃんの友達とかみんな喜ぶ」
「坂崎あすなは?」
「え」
「喜ぶの」

辻村深月『名前探しの放課後』下巻45~46ページ

ここ、ぶっきらぼうだけど、少しでもあすなのことを聞き出そう、あすなのことを知ろう、っていう前のめりな姿勢が好き。
誰も言ってくれないけど河野めちゃくちゃしごできで推せないですか??

それから、いつかと河野に唐突に親いない話を始めたあすなに対し…、

「坂崎あすな、ごめん。レールに寝た自慢話なんかして、ごめん。思い出させてごめん」

辻村深月『名前探しの放課後』上巻52ページ

青い顔をしてびっくりするほど必死に謝っているのは、きっとあすなが一度自殺していると知っているから。
なんていうか、本当にいい子。

えしゃ
えしゃ

好き!

それから、念願の福島弾丸旅行で、あすなに鬼電入っていると知り、すぐに「帰ろう」という河野も好きなところ。

そんな河野に対して言う、いつかの「偉い」。
すべての事情を知ると重みが全然違いますよね…!

あんなに楽しみにしてお金を貯めていたのに、すぐに「帰ろう」が出てきたのは、もちろんあすなが祖父の死に目に会えなかったという事情を知っているからだし、これはもう本当に「偉い」。

優先順位をちゃんとつけられるの、立派だと思う。

期末の勉強会

水泳大会が終わってすぐ、クリスマスパーティーの準備&期末勉強会が始まります。
これももちろん、あすなとのつながりを切らないため。

「来週からは俺や秀人も部活がテスト前で休みに入る。面倒見てやる。椿と、それから坂崎や河野も呼ぶか。―様子を見る意味でも丁度いいだろう?」

辻村深月『名前探しの放課後』上巻228ページ

天木の「様子を見る」は河野ではなくあすなの方にかかっていたわけですね~。

勉強会を不二芳でやるの、あすなは「家に帰るギリギリまで河野のそばにいるため」と解釈しています。

これをあすなに読み替えて、「ギリギリまでそばにいるため」ももちろんあると思いますが、どちらかというと「あれ」が起こるであろう十二月は、あすなにはなるべく不二芳にいてもらった方が良いからですよね、きっと。

江布で勉強会やってて間に合いませんでした、じゃ話にならない。

あすなの家からの最短経路も調べてるだろうなぁ、天木は。

その他本当に細かいところ解説

「秘密の花園」の看板

いつかが「タイムスリップ」に気付き、あすなの話のきっかけにもなった「秘密の花園の看板が下ろされること」。

これについては、作中天木から指摘を受けている通り。
いつかには看板が撤去されることを知る機会があり(義兄の工務店で請け負っている)、頭の片隅に残っていた、という理解で良いのかなと。

放映中のドラマのあらすじ

タイムスリップ初日に「放映途中で興味をなくして見るのをやめた」と言っているドラマですが、この時点以降のドラマの記憶がなかったので、こう辻褄を合わせたのでしょう。

「最後にまとめて聞いた」というあらすじは「いつかの妄想」。
実際にそのドラマを最後まで見ていたら矛盾に気付いたんじゃないかなぁ。

あすなと親しくなる前のいつかはかなり投げやりに生きているので、今見ているドラマのことも「そのうち興味をなくして見なくなるのがオチ」くらいに感じていて、だからこういう筋書きになるんだろうなぁ。

「見たけどよく覚えてない」じゃないところが、この頃のいつかの精神状態を表している気がします。

タイムスリップ後の自室

「タイムスリップ」後に初めて自分の部屋に入ったとき、大きな変化はないけどなんとなく違和感を感じている…といつかが言っていますが、
これは他に推測材料もなく、単に神経質になっていただけ、と解釈するしかないところ。

もしかしたら昼間お母さんが掃除に入った、なんてオチだったのかもしれない。

あすなを計画に引き込むこと

あすな自身も言っていますが、顔が広く能力の高い天木を始め、協力者を何人か見つけている時点で、大して親しくもなくSFにちょっと詳しいだけのあすなを頼る意味が不明。

しかし、いつかはそれを半ば強引に引き留めています。

「もう事情を知ってるっていうのに、無視するわけ? こないだは信じてくれるって言ってたのに、冷たくない?」

辻村深月『名前探しの放課後』上巻209ページ

あすなと信頼関係を築くためにもこの先も付き合ってもらわなければ困るわけですから、そりゃあ必死にもなります。

このとき「貸してくれた本を読んだ」とピンポイントであすなに刺さる言葉を出せるいつか、本当に持ってる。

初めて河野を見たときの「違和感」

いつかが河野を初めてバス停で見かけたとき、時刻表を楽しそうに見ていて愕然としたくだり。

明らかに意味ありげですが、これは本当にただ単に気になっただけ、でしかないシーン。

ちなみに、時系列的には秀人に話して天木に話す前なので、当然いつかと河野が知り合う前です。
このとき初めて河野を見かけたこと自体は事実だと思います。

体育倉庫合流前のやり取り

閉じ込められた河野を助けに行くとき、秀人といつかがこんなメールを交わしています。

『来るの?』
『行く。坂崎あすなと今、合流』

辻村深月『名前探しの放課後』上巻312ページ

これも改めて見ると違和感のある言い回し。
「(いつかたちも)来るの?」ではなく、「(あすなは)来るのか?」が聞きたい、ということだったんですね。

もしあすなを連れ出せなければ芝居はできず、江布組は解散になるでしょうから、その確認というわけです。
(むしろいつかの知らせを受けてからみんなで学校へ向かったまである)
「坂崎あすなと」行くから意味があるわけです。

いつかの失言

グリルさか咲に初めて全員で訪れた日、天木の私服に対し「先週もそうだった」と口を滑らせ、天木に睨まれるいつか。

これはそこまで神経質にならなくていい気がしますが、あすな抜きの仕掛け人会議を「先週」「私服で」やったということでしょうね。

日付ベースで話していないのではっきりしませんが、
天木たちとあすなが初対面

「その翌日」河野の遺書に気付く

「その翌日」友春が河野を蹴る

「その週の金曜」河野が体育倉庫に閉じ込められる

その翌々日の日曜、みんなでグリルさか咲へ

こういう時系列になります。

つまり、ここで言う「先週」はあすなが天木たちと会う前のことになるので、別にあすな抜きで集まっていても変じゃない、というかそれはあすなも把握していることなので失言ではないようにも思いますが…。

河野の親戚

さて、河野の従兄弟・叔母についての話はすべて友春とその母のことと考えて良さそう。

  • 江布でカルチャースクールをやっている叔母→友春の母
  • 河野の親に江布をごり推ししていた親戚→たぶん友春の母
  • 夜帰らない時もある→友春と遊んでそのまま泊まり?
  • 同じ高校に通っている従兄弟→友春
  • 体育倉庫帰りに泊めてもらった親戚の家→友春の家
  • 二人旅した従兄弟→友春
  • 親戚旅行で河野と手を繋いでいた従兄弟→友春

いつかが「従兄弟と二人旅」のくだりで過剰にびっくりしているのは、実際にその「従兄弟」を知っていて、彼がそういうオタクには見えないタイプだからですね。

振り返ると、結構あすなの前で友春の話してるよなぁ…。

最短経路探し

それから、最短経路探しはこんな感じですかね。

  • 消防車…勇雄に調べてもらうが、消防団員しか乗れず却下(「天木には諦めてもらおう」)
  • 友春の特別メニュー(制服でダッシュ)…友春が神社に停めているバイクに辿り着くまでの時間を計測
  • 河野のダイヤ改正トーク…いつかに大興奮で電話
  • いつかのバイク免許…免許取ってすぐ、おそらく友春に借りたバイクで学校近くを走行
  • 松永くんがわざわざ学校からグリルさか咲へタクシーで向かう

松永くんのタクシーだけちょっと疑問なんですけど…。
前に予定があるのに、わざわざ学校の近くからタクシー乗り付けてくるのはおかしな話。

天木に領収書か何か渡しているし、タクシーで来た場合どれくらい時間がかかるのか確認してたのかなぁ…なんて思います。
タイミング的に終業式後の24日じゃあ、「あれ」が起きた後になってしまうから、いまさら検証する必要もないと思うのですが。

ダイヤ改編の知らせ

『師匠! 出たよ、出ました。十二月のダイヤ改正。待ちに待ってた資料が来ました!』

228

ここね…誰も興味ないダイヤ改編の話をわざわざ電話でいつかにするの尊い…って思うじゃないですか。

まさかここが一番大事なところだったとは。

これを受けて河野がすべての計画を練り上げたから、その直後に椿ちゃんが試験対策と称して「特製ノート」を配るわけなんです…!
何も知らないと何となく不思議な流れが、全部を知ってから読むときれいに1本に繋がるんですよ…!これすごい気持ちいい。

ここで配られたノートは、あすな以外は二冊ずつ持っていて、ダミーの試験対策用と(みんな助かったと思うけど)、本命の時刻表の方、両方を全員が持ち歩いています。
そして、間違ってあすなに中を見られないように名前が大きく書かれているのです。

椿のコスメ

細かいところですが、あすなと秀人が礼華に忍び込むシーンから…。

あ、秀人くんだ。いいなぁ。妬けるなぁ。ねぇねぇ、秀人くん。今度またコスメ買いに行こうよ。

辻村深月『名前探しの放課後』下巻79ページ

ここは考え過ぎかなーとも思いますが、もしかしたら河野の怪我の偽装に使うチークを買いに行ったときの話なのかなーと思ったり。

いつかの報酬の使途

ちなみに、いつかに協力したみんなの対価ですが…

  • 秀人&椿(&たぶん松永くん)…無償
  • 天木…成功報酬で選挙に協力してもらう
  • 河野…旅行代(おそらく3人で行った福島旅行)
  • 友春…バイクの買い替え(志緒談)

いつかの経費ですが、福島旅行に自分も行ったのがかなり痛かったんじゃないかなー。
2人分で5~6万、プラス友春にも河野と同額くらいは渡すとして、これでもうほぼ10万。

河野と自分のプールの練習代も出しているだろうし、当初の貯金の10万は12月入る前には完全に空でしょうね。

勇雄が「まとまった額をぽんと貸してくれた」分でなんとかした感じかな。
愛だなぁ…。

八木千春との会話

あすなの幼馴染・八木千春ちゃんの話も少しだけ。

いつかが彼女と話をしたことに触れるのは三回。

一度は、あすなといるときに中学時代の同級生に遭遇して、お互いイライラしてるときに「この前駅前で八木に会った」。
次は、あすなのお祖父ちゃんを水泳大会に誘った日、「昔水泳で失敗したと八木に聞いた」
最後は、水泳大会の日に八木ちゃん本人に会ったときに「この前は電話でいろいろ聞いてごめん」。

おそらくこれらは全部同じことを指すんだろうなと。
あすなの後悔を知るために、まず真っ先に、一番あすなのことを知っていそうな八木ちゃんに電話をして、水泳の話を聞き出したんです。

ただもちろん、八木ちゃんに電話までしてあすなのことを聞き出したのは明らかに不自然なので、あすなには「駅前で偶然会った」と説明しているわけです。
というかこれ自体口が滑ったというか、あすなに言う必要のないことで、天木にバレたら結構怒られてそう(笑)

イブ前々日の河野と友春

普通に遊んでいるところをうっかり見られてしまった2人。
仲良すぎか(笑)

「だっからさぁ、言ってるじゃん、基くぅん。わかるだろ?」

辻村深月『名前探しの放課後』下巻273

友春の台詞が絶妙にイラっとするんですが、よく考えると特に何も言ってない…(笑)
あすなの印象が最悪だなけで、ただこういうしゃべり方な子なんだよなぁ。

そして河野ももちろん普段通りぼそぼそしゃべってるだけ。
たまたまお金を出していたのは本当に間が悪かった。

しかしXデー直前に迂闊な行動であるのは間違いないので、天木には後でめちゃくちゃ怒られたでしょうし、いつかもぶちギレてそう…。

翌日河野が声をからしてグリルさか咲へやって来るけど、責任もって友春とカラオケでも行って声からして来たのかな…(笑)

河野のだる絡み

個人的にちょっと深いなと思うのが、年明け、初詣での河野のこの発言。

「ねぇねぇ、師匠。今年はどんな妄想をする予定?」

辻村深月『名前探しの放課後』下巻366ページ

Xデーのクリスマスイブを乗り越えたからこその軽口…ではなく、十二月中に全員無事だったことから「妄想」とだる絡みしてるんだろうなぁ。
仲良いなぁ、この2人。

(付き合わなかった)鶴田先輩

最後におまけで、名前しか出てこないあの先輩の話で終わります。

付き合った期間の記憶

前編でも触れましたが、鶴田先輩と付き合った期間の記憶もすべて妄想です。
過去の元カノたちとの思い出を適当に合成した感じでしょう。

にしても、付き合う前から「すでに別れることを考え始めていた」っていう考えが無意識にあるっていうね…。
本当に投げやりだよなぁ。

クリスマスイブについて

「あすなが自殺した」日と偽のXデーであるクリスマスイブは実際には異なるので(実際というか前者もいつかの妄想ですが)、
クリスマスイブに外泊したという話と、翌朝自殺の知らせを布団の中で聞いてるっていうのは若干矛盾していますね。

「その日って、今考えるとクリスマス・イヴだったんだよな」
付き合う予定だった鶴田先輩と過ごした記憶があるにはある。
今日帰らなくていいんでしょ? とか何とか、お定まりの会話と外泊。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻220ページ

電話のベルが鳴っている。布団の中で、いつかはそれを聞いている。

辻村深月『名前探しの放課後』上巻71ページ

ただ、いつかの素行が悪いので、親にバレないように早朝帰ってきたのかな~程度に思って読者がスルーしてしまうという…。

下巻以降はもう少し印象良くなるんですけどね、上巻時点のいつかではそんなもんでしょう。

おわりに

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
語りすぎて若干無粋な気もするけど私は満足…。

プロフィール
えしゃ

えしゃ(@shallot0147)と申します!
・ラブコメ好き。少女漫画とラノベが大好きです!
・雑食&乱読
・好きなジャンル:ラブコメ、広義のミステリー、ローファンタジー、食べ物が美味しそうな話
・愛読書:辻村深月『名前探しの放課後』

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