『ぼくのメジャースプーン』未読で『名前探しの放課後』を読んでしまった方へ。
『名前探しの放課後』の「ぼくメジャ」関連部分を解説します!
極力「ぼくメジャ」のネタバレにならないように書いています。
だから、この記事を読んだ後で「ぼくメジャ」を読みたくなっても大丈夫です◎
ちなみに私も、ぼくメジャ未読で名前探しの放課後に挑んだ者です(^^;)
『名前探しの放課後』解説!
ラストの秀人のアレ、なんなの…?
ラストで突然秀人が独白を始め、戸惑った方も多いのでは。
そこまででもかなりの匂わせがあり、「ぼくメジャ」既読の方には周知の事実ですが…
実は『名前探しの放課後』の秀人は、『ぼくのメジャースプーン』の主人公と同一人物。
そして、その「ぼくメジャ」の主人公は特殊能力持ちです。
『ぼくのメジャースプーン』では、秀人の特殊能力(条件ゲーム提示能力)にまつわるあれこれが描かれているのですが…。
『名前探しの放課後』には、秀人の能力そのもの以外は全く関係ないので割愛します。
さて、その秀人の能力を、ネタバレにならない範囲でざっくり説明するとこんな感じ。
依田いつかのタイムスリップとは何だったのか
この能力を、『名前探しの放課後』での出来事にあてはめて説明していきます。
まず、いつかがタイムスリップに気づいた日、いつかと秀人は口論になっていました。
女子と不誠実な付き合い方を続けるいつかと、(いつかからすれば)たいして可愛くない椿ちゃんと付き合う秀人。
お互いのちょっと理解できない部分がぶつかり合い、かっとなった秀人はいつかに言います。
たとえばさ。今から三ヵ月後、自分が本当に気になってる女の子が死ぬって仮定してみてよ。そうしたら、自然と誰か思い当たらない? そういうのがないなら、いつかくんの人生はすごく寂しいよ。
辻村深月『名前探しの放課後(下)』文庫版439ページ
秀人自身も条件ゲーム提示能力を使おうとしていたわけではないので、少々イレギュラーな言い回しですが、構造はこうかなと。
Aの命令にあたる部分は、「三ヵ月後に気になっている子が死ぬと仮定しろ」。
そしてBの代償にあたるのは、「いつかの人生は寂しい」。
本当に気になっている子が死ぬことを想像するか、自分の人生が寂しいものとするか、二択を迫られたいつかは、迷わず気になっている子が死ぬことを想像します。
つまり、3か月後にあすなが死ぬことをいつかは想像した、ということになります。
そこで迷わずあすなが浮かんだという点について、ラブコメ脳オタクとしては3時間くらい語りたいところですが、今回は関係ないので割愛します(笑)
ここでポイントとなるのが、「条件ゲーム提示能力が発動した前後のことを相手は忘れてしまうこと」。
そのため、きっかけとなる秀人からの問いかけは忘却され、あすなが死んだという「想像」だけがいつかの記憶に残ります。
これにより、細部まで想像された妄想を「実際に体験したこと」といつかはとらえてしまいました。
「ふと気づいたとき」、一瞬の妄想から我に返ったのではなく、3か月後からタイムスリップしてきたと感じてしまった。
これが依田いつかのタイムスリップ現象の仕組みです。
というわけで、要するに「依田いつかのタイムスリップは、秀人の能力により疑似的に引き起こされたものだよ」ということを言っていたわけです。
といっても、「なんか秀人がやったのか」程度の理解でも特に支障はないので、当ブログは『名前探しの放課後』の前に「ぼくメジャ」読まなくても大丈夫だよ~という方針で運営しています
いつかの予言は事前に想像できることばかり
そして、振り返ってみると、作中でも天木に指摘されている通り、いつかが知っている「3か月間の出来事」はすべて、タイムスリップ前の情報で知る・想像できることばかり。
例えば、甥っ子の名前。
未来が変わった!と感激しているところ申し訳ないのですが、実際には満塁という名前がついた未来なんてものはなく、最初から甥っ子の名前はまだ未定だったわけです。
いつかの身に起きたのは「子供の名前を満塁にしようと思っていると勇雄から聞いた」ことのみ。
そして、それを受けて「このままこの名前がつくんだろうなぁ」と思ったところまでが、実際にあっただろうこと。
生まれた子供に本当に満塁という名前がついたとうのは、そこからのいつかの推測。
…といった具合に、すべてが事前に想像できることばかりなんです。
多少は不思議に思った部分もあるのでは…
本当はタイムスリップしていないという視点で振り返ってみると、タイムリープもの・ループものでは定番の「同じ授業を複数回聞くだるさ」的な発言がいつかから一切ありません。当たり前ですが。
序盤で「テスト前にいつも一夜漬けだから~」とか言ってますが、2か月以上授業内容に一切聞き覚えがなければさすがに変だと思うのではないかと。
期末に至っては一度受けたはずですからね。
いくら不真面目でも、問題に一切覚えがないというのは不自然です。
天木からの「意地悪な」指摘にカッとなってるのも、図星だったからではないかな、と思います。
意外と聡い子ですし、「本当に自分はタイムスリップしたのか」については疑問に思っていたのかな~というのが個人的な見解です。
とはいえ、自分でみんなを巻き込んで、お金も時間もつぎこんでやっている一大事業。
それに対して、いつかの持っている武器はその3か月間の記憶のみ。
もう後には引けないし、「絶対本当だ」と自分に言い聞かせながら頑張ったのかなと。
結局あのタイミングでおじいちゃんが倒れたのは偶然ですが、なんかそうやってつじつまが合っちゃうの、ご都合主義というよりも、「いつか持ってるなー」って思います。
やはりイケメン、というか強者の貫禄…
これから「ぼくメジャ」を読む方へ
最期に、この記事を読んで、「やっぱりぼくメジャも読んでみたいな」と思った方へ、これからぼくメジャを読むときの注意点です。
『名前探しの放課後』→『ぼくのメジャースプーン』の順で読むと読後感が悪いです。
特に『名前探しの放課後』が気に入った方、余韻がぶち壊しになる可能性があるので、少し間をおいてから読むことをおすすめします。
もし余裕があれば、『ぼくのメジャースプーン』を読んだ後に、もう一度『名前探しの放課後』を。
これで笑顔で読み終われるはずです!
おわりに
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
『名前探しの放課後』は、いつかと河野が意外と仲良くなっているとこがすごく好きで、いつもにまにましちゃいます。