映画化もされた辻村深月先生の『ツナグ』。
「亡くなった人ともう一度だけ会えるとしたら」をテーマにした連作短編集です。
2010年に『ツナグ』、2019年に続編となる『ツナグ 想い人の心得』が出版されました。
この『ツナグ』ですが、泣けます。すごく泣けます。
泣きたいときにぴったりな『ツナグ』の魅力をネタバレなしでお伝えします。
『ツナグ』とは?
あらすじ
使者のルールは大きく2つ。
つまり生きているときと、亡くなってから、それぞれ一人だけしか会えないので、基本的にはお互い大切に思っている「両想い」の状態でないと会えないという仕組みです。
いくらでも使えるわけではないというのが、すごくリアル。
自分だったら誰に会うかな、なんてついつい考えてしまいます。
こんな人におすすめ
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『ツナグ』のここが魅力!
「型」のない連作短編
使者と生者をつなぐ、会えるのは一人だけ…と聞くと、「家族をテーマにした感動もの?」と想像されると思うのですが、それだけで終わらないのが辻村先生。
確かに、家族と会って再会を喜び合うパターンが多いものの、友だちと会ったり、面識のない人と会ったり、さらには「ツナグ」を使わなかった人もいました。
連作短編でありながら、決まった「型」がないので、毎回新鮮な驚きや感動が得られます。本当に一人ひとりに人生があることが感じられるんです。
使者・歩美も一人の人間である
不思議な「使者(ツナグ)」の力ですが、使者自身は特に神様の使いだったり妖精だったりするわけではありません。代々その役目を引き継いでいるだけの、ただの人間です。
使者である歩美くんにも一人の人間としての生活、人生があります。人の死に触れれば、迷ったり、辛い思いをしたりする。そういった人間らしさもこの作品に深みを増しています。
誰にとっても他人事ではない
『ツナグ』で、亡くなった人と再会を希望する人々は、何か心残りがある人です。
「生きている間に話したかったこと」「してあげたかったこと」…そんな後悔が語られ、使者の力で心残りを解消していきます。
その様子に涙しながら、「自分だったら?」と自然に考えると思います。でも、夢のないことを言うと、ツナグはもちろんフィクション。現実にはこんなチャンスは訪れません。伝えたいことも、してあげたいことも、生きている間でないと間に合わないのです。
『ツナグ』を読み終わったら、きっと大切な人にもっと優しくしたくなっているはず。
ぜひ続編の『想い人の心得』まで読んで!
実は私、1作目の『ツナグ』は少々苦手でした。後味の悪い話もありましたし、後悔を払拭しきれていない印象があり、自分の中でうまく消化できなかったんです。
でも続編の『想い人の心得』はとても良くて、こちらを読んでやっと前作が消化できました。
続編の方が素直に後味の良い話が多いです。基本的に歩美くん目線で語られること、さらに歩美くんが社会人になっていることもあって、依頼人たちの気持ちを上手く受け止められているような気がしました。
ぜひ『想い人の心得』まで読んでもらえるといいなぁと思います!
ネタバレあり感想
『ツナグ』のネタバレ感想は、別記事でまとめました!
おわりに
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
ちなみに私が1作目・2作目通して一番心に残っているのは、続編『想い人の心得』の中の「一人娘の心得」。
物の見方が変わるラストのシーンが、すごく辻村深月先生らしくて優しくて。これ好きだなーと笑顔になりました。
泣きたいとき、優しい気持ちを取り戻したいときにおすすめの『ツナグ』、ぜひ読んでみていただけたらなと思います!
『ツナグ』の次に読むなら!
『ツナグ』が気に入った方におすすめの作品はこちらです!
辻村深月『スロウハイツの神様』
同じ辻村深月先生の『スロウハイツの神様』は、悩めるクリエイターたちを描いた群像劇の名作。
『ツナグ』と同じく、胸がきゅっと締め付けられて、でもじんわり温かいような、そんな感覚を楽しめます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!
また、辻村深月先生の作品をもっと読みたい!という方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。