【ネタバレ感想】阿賀沢紅茶『氷の城壁』はなぜ人々を惹きつけるのか

『氷の城壁』素晴らしいよね、なネタバレ感想です！

感想！

なぜ『氷の城壁』はこうも魅力的なのか

『氷の城壁』って、流行ってるとかバズってるとか、そういう一過性のものではなく、なんかこう溶け込んでいるというか…しみわたっていますよね。うまく言えないけど。

誰でも読んだらハマるんじゃないか！？くらいに思うのですが、何がそんなに人々を魅了するのか…を真剣に考えてみたのですが。

たぶん、当て馬がいない。

ってところかなーと思います。

少女漫画に限らず、恋愛ものって登場人物に多少の鈍感さが必要。相手の気持ちにも、自分の気持ちにも。
なぜなら、敏いと話が進み過ぎちゃうから。両片思いとかならない(笑)

ただ、そうなると話を進めたいときに何かきっかけがないといけなくなって、起爆剤として登場しやすいのが当て馬。
当て馬の存在により自分の気持ちを自覚したり、焦って行動に移したりということになります。

こういう展開が悪いとは言いません。少女漫画の伝統芸能です。
（個人的にはむしろ大好きです。少女漫画オタクなので）。

ただ、なんというか物語的というか、まぁリアリティには欠けるかなぁと。
欲しいときにさっと当て馬が出てくるというのは…。

対して『氷の城壁』にはそういう都合のいい展開やキャラクターがおらず、圧倒的リアルさが魅力なんだと思います。

例えば美姫とヨータの場合。
一回美姫がフッて、お互い傷ついてなんとかふつうの友達に戻った後、美姫が自力で恋心を自覚し（ここ重要。当て馬に焦らされるでも、友達に諭されて気づくでもなく、あくまで自力）、懸命に告白し直すという、物語としてはなんともまとまりがなく、もたついた展開。

でも、そこが良いんです。

現実ってこんなもんというか、全然スムーズじゃないし、後悔することばっかりだし、でも頑張ってなんとか生きてる…！みたいな感じがとても良いんです！！

桃香は当て馬ではないのか？

ちょっと待て、当て馬といえば桃香ちゃんがいるではないか…と思われると思うのですが、個人的には彼女は「当て馬」ではないと思っています。

だって桃香ちゃんめちゃ頑張ったじゃないですか！

といっても、私は桃香ちゃん自体は全く好きではないです。
好きではないんですが、好きな人への直球体当たりアタックは好きで、嫌いにもなれない。

顔面偏差値高めで人生勝ち組、ゆるーく楽しんでます♡的な感じ出してるけど、ミナトまわりのエピソードが不器用すぎて。

好きになったタイミングももっと軽薄な感じかと思っていたら、風邪で死にかけのところ助けられたとか、告白もスマートに決めると思いきや「私関係なくないですか！？（号泣）」とか、なんかな～…絶妙に好みで嫌いになれない…

「当て馬ではない」と断言したのはこのあたりで、桃香ちゃんにもちゃんと物語があって、自分の意志で頑張ってるから、物語を動かすためだけの「当て馬」ではないよなーと個人的には思うんです。

当て馬だったら主人公カップルの恋の起爆剤でしかないから、このへんはもっとスマートにやるし、あとミナトも一回付き合って話をややこしくしたりしない(笑)

取り繕ってない等身大感

当て馬がいない、ということについてもそうなんですが、全体的にみんなの等身大感、「生きてる」感がすごい。

細かいこと言うと、こゆんちゃんが朝パン食べるとき皿出してないとか(笑)、なんか細かい生活感の再現度が高くて、物語感が薄いんですよ。

学校生活、友人関係もいちいちなんかリアルで、自分が高校生のときの空気のにおいまで蘇ってくるような、なんかとにかくすごい。

細かい生活の切り出し方がすごく上手いんです。
そんなリアルなところが、多くの人に愛される理由なのかなと思います。

好きなシーン列挙～

というわけで結論は出たのですが(笑)、もう少し語りたいので好きなシーンをつらつらと書いていきます。
ご興味があればお付き合いください。

こゆんとミナトが初めてちょっと通じ合ったシーン

4人勉強会でヨータに気を遣って、ミナトと一緒に教室を出たこゆん。
話の流れで、ミナトが「俺も怖い？」と聞くところ、それに対し、こゆんがミナトも感情のある人間だった、と当たり前のことに気付くシーンが好き。

個人的にはそれまでひょうきんにふるまうミナトちょっと怖かったのですが、不安げな表情をのぞかせたことで一気に人として魅力的に感じました。
今までミナトの気持ちをちゃんと考えていなかったと自己嫌悪するこゆんも『氷の城壁』らしくて好きな流れ。

ユーキ初登場のミナト

こゆんにべたべたするユーキにモヤつくミナトが可愛い…
こゆんを好きになって、アンドロイド感のなくなってきたミナトがとても良いです。

ここから桃香ちゃんが引っかきまわすまでのピュアみのあるミナトがすっごく良い。

こゆんとミナトの夕日ダッシュ！

あらゆる意味で物語感のない『氷の城壁』ですが、ところどころ見せ場は作られていて、特に胸が熱くなったのが、ひとりで傷つくミナトの前に現れたこゆん～からの～２人でダッシュ！！のシーン。

美姫が恋心に気付くシーンとかもそうなんですが、走ってるときの青春感がすんごくいいですよね～。

「どうしたの？大丈夫？」みたいな静かな感じじゃなくて、全部吹っ飛ばすダッシュなのが好き！

あとその後の照れミナトも好き。

このあたりのね、みんなの歯車があってきた感じがいいですよね。しあわせ。

おわりに

最後まで読んでくださり、ありがとうございます！
読者に一番人気なシーンってどこなんでしょうね～？やっぱり夕日ダッシュかなぁ。